アナルコ・キャピタリズム研究(仮)
MiniBlog 060724-060826


06/08/26 (つづき)

アナルコ・キャピタリストは国防に関して2つの学派に分かれている。 1つはそれを公共財と見るが供給は民間に任せる派、 もう1つはそれを公共財と見ずとうぜん供給は民間による派である。

管理人は国防を公共財と見て主に寄付的な方法に期待するという説明よりも、 国防を公共財に関する一般通念もろとも神話として粉砕する説明のほうが好きである。

(もっとも、もし日本が単独で無政府国家に移行できた場合、世界中の富と人が一極集中的に集まってくる。現在の日本の防衛費はだいたいGDPの1%程度であるが、無政府国家日本は信じられないほど豊かになっているから、国防や都市防衛が公共財だとしてもそれらは十分寄付的な方法によって供給されると考える。)

管理人の想像する無政府資本主義都市は 自由競争する民間警備会社によって外国の侵略から守られる。 個々の警備会社がそれぞれ外国の侵略から顧客の生命と財産を守る。 (もっとも敵が外側から来ようが内側から来ようが関係ない。) 個人個人の需要が各警備会社の創意工夫と技術革新によって 満たされる。

しょせん軍事力はお金と知識と技術である。 とても豊かな無政府国家では核を始めとする軍事力が民間によって分散所有されているだろう。 (これは無政府国家が安定的になるポイントである。) 最高級の警備会社は自前の大規模防衛・反撃システムを 海側の埋立地に用意しているはずだ。 バフェットのような大金持ちたちが必ずそういうのを需要するから供給される。 1社で準備できない場合は2・3社の共同開発・共同利用のようになるだろう。 また最高級の警備会社はMI6のような部署をもっていて 世界のどこかで不穏な動きがあれば未然に処理する。 たとえこれらが他のただ乗りを許す公共財的行為であっても、 それはネコに鈴をつけに行くネズミではなくネコを飼いならす人間である。 敵が強いなら相応の費用を負担しなければいけないが、 とても豊かな無政府国家の高級警備会社にとっては そのへんの貧しいテロ国家など問題ではないに違いない。


06/08/26 (つづき)

肝心なのは個人の生命と財産を守ることだ。(国防を論じるとき必ずここから離れてはいけない。)そして問題の焦点は無政府国家は外国の政府に乗っ取られるのではないかということである。

ソ連という脅威がなくなったことで国防の問題はずっとイージーになったというのはアメリカのアナルコ・キャピタリストの共通認識である。 無政府資本主義合衆国がかなり現実的に考えられるようになったのはソ連の崩壊による。 問題は侵略の規模であり、怖いのは大きい敵だ。それも思想が大きく異なるような。 それは冷戦時のソ連であり、近年のアルカイダや北朝鮮である。

無政府資本主義国家では個人の生命と財産を守ることは 主に民間警備会社に委ねられている。 都市では多数の警備会社によって市民の安全が守られている。 そして一方である悪い外国政府がその無政府国家の一つの都市を制圧して乗っ取ろうと目論んでいるが、個人の生命と財産を十分に安全にするためには 十分な抑止力・反撃力をもってその攻撃主体を物理的・心理的に十分隔離しておかなければならない。

もし民間警備会社が協力して大きな軍事力を備えていれば侵略は防げるだろう。 だがその場合は公共財問題=フリーライド問題=囚人のジレンマになる。 協力して軍事力を作る過程で各警備会社は保険料を上げなければならないが、 どの会社もそこから離脱し保険料を安くして独占を狙うインセンティブがある。 同時にこのような多数による協力を考えるのは政府を作ろうとしているのと変わらないし、 このように作られた責任の所在のない軍事力が個人の需要によく応えよく機能すると思えない。 (つづく)


06/08/26 (つづき)

公共財問題というのは要するにフリーライド問題である。 路上で若者によって音楽が供給されるとき、誰でもその音楽にただで乗ることができる。 国防という大きな傘が差されるとき、原子爆弾の投下が抑止され、誰も死の雨に濡れることはない。

北朝鮮が日本に攻めてこないのはアメリカのバックアップを受けた自衛隊が反撃するからである。また核ミサイルを撃ち込んでこないのは金正日にそういうインセンティブがないからである。(彼はじっとしていて自分の立場を急に危うくすることさえしなければ、美女に囲まれながら寅さん映画を楽しめる。)これが国防である。

管理人のイメージする無政府資本主義国家では 各都市ごとに数十社の民間警備会社が市場で競争している。 問題はそれら都市の警備会社が同じ地域にあり、 地域防衛がやはり公共財になるのではないかということである。 (国防=国家防衛は問題でなく、地域防衛・都市防衛が問題。) 各警備会社が協力して外国からの侵略に立ち向かえばいいと思うかもしれないが、 どの警備会社も他の会社を当てにしてフリーライドするインセンティブがある。 (つづく)


06/08/26 国防というのはよくわからない。 アナルコ・キャピタリズムでは最も難しい、最後の問題とされる一方、 そもそも守るべき国がないのでは、国(という概念)は捨てたのではという 一見したところの矛盾がある。

世界が同時にアナーキーになるなら問題はない。 民間警備会社だけがたくさん地球上に存在する状況。 これがアナルコ・キャピタリストの究極的な理想に違いないが、 実際一人のアナルコ・キャピタリストが熱心に考えているのは、 自分の住む国(主にアメリカ合衆国)が単独でどのように無政府国家になるかということである。

国防はふつう公共財とされる。それも多くの場合ピュアという形容詞付きで。 そして(公共財だからといってすぐに政府を持ち出さないのはリバタリアンとして最低限当然のことだが)アナルコ・キャピタリストは結論として国防も民間でやるべきだと考える。 たとえ効率的な生産ということで少し政府に劣ったとしても、 (その不便は他のいろいろなことで十分に補われて余りあるから) 破滅的な事態にならないのであれば国防は民間ですべし、すなわち無政府資本主義にすべしと考える。(つづく)


06/08/18 竜安寺の石庭が一躍世界的に有名になったのは、1975年にエリザベス女王が訪れてそれを絶賛したことによる。竜安寺の石庭には多くの人が大きな価値を置く。 石庭には15の石がある。15というのは中国や日本で縁起のいい数である七五三の和である。数学では6や28を完全数というが、これもまた一種の完全数といえるだろう。(連続する3つの素数の和でもある。) 一方で石はどの場所からも15個すべてを見ることができないという哲学チックな配置となっている。

竜安寺の石庭は一揃いの全体として最高の意味や価値があるに違いないが、 個別の石をバラ売りにしても相当高い値がつくだろう。 月の石は400キロほどNASAにプライスレスな「国宝」として保管してあるそうだが、 もしオークションにかければものすごい値段がつくだろう。 いずれの場合でも文字通りの宝石だからだ。

原始人の使っていたお金として大きな丸い石を思い浮かべるかもしれない。 でもよく考えるとお金を使っていなかったから原始人なのである。 もっとも石の貨幣はミクロネシアのヤップ島で第2次大戦前まで使われていたし、 現在でも大きな石貨は婚礼など特別な契約の際に使われている。 これらは大昔に遠くの島から大変な思いをして運んでこられたもので、 その石の歴史や物語が価値となっている。 珍しい希少な石やそれを加工したものは通貨になりうる。 ただしこれは未開な狭いコミュニティの特殊ケースである。

少し進んだ経済で通貨になるためにはそれ相応の存在量が必要になる。 古代の中国では貝(タカラ貝)が通貨だった。 (経済関連の本は貝がつく漢字ばかり並んでいる。) インドなどでは近代まで貝が使われていた。 実際タカラ貝は世界通貨だった。

紀元前の時点ですでに金銀銅の鋳造貨幣が当時の先進国で広まっていた。 物々交換と鋳造貨幣の間にはいろいろな歴史があっただろうが、 より便利なものが取って代わっていくというのは自然なことである。 (紙幣の始まりは鋳造貨幣の預かり所のレシートである。)

「政府は国防をやってあとは金をばらまいておけばよい」と言う人がたまにいる。 彼は安全な庭で水をまいて植物を育てるというイメージをもっているのかもしれない。 リバタリアニズムについて特に勉強したことがないのであれば筋はいいが、 でもやはり間違っている。 それどころか国防とお金は自由のための最も本質的で重要な問題である。

前置きが長くなったが、自由社会のお金について考えるときは 必ず物々交換の話から始めなければならない。 そして人類の長い歴史では貨幣は(起源を含め)かなりのケースで私的に製造され、 中央銀行などはつい最近まで存在しなかったということをよく知らなければならない。


06/08/14 YouTubeから政治の表舞台で戦うリバタリアンRon Paul: Libertarian vs. Congress: Don't regulate the Internet


06/08/08 評判は一種の財産である。でも誰も評判に財産権をもたない。

<宮内オリックス会長>「月刊現代」記事で名誉棄損と提訴

オリックスと同社の宮内会長が「月刊現代の記事で名誉を傷つけられた」として、発行元の講談社と筆者に2億2000万円の賠償などを求める訴訟を7日、東京地裁に起こした。「月刊現代」は政府の規制改革・民間開放推進会議の議長を務める宮内会長が、情報を利用して村上ファンドの投資先を選び私益を得ていると報じた。(毎日新聞8月7日)

The Ethics of Liberty (Murray N. Rothbard) より。(昨日の引用部の最後 ... and sell that statement. に続く文章。)

... The counter-view, and the current basis for holding libel and slander (especially of false statements) to be illegal is that every man has a “property right” in his own reputation, that Smith’s falsehoods damage that reputation, and that therefore Smith’s libels are invasions of Jones’s property right in his reputation and should be illegal. Yet, again, on closer analysis this is a fallacious view. For everyone, as we have stated, owns his own body; he has a property right in his own head and person. But since every man owns his own mind, he cannot therefore own the minds of anyone else. And yet Jones’s “reputation” is neither a physical entity nor is it something contained within or on his own person. Jones’s “reputation” is purely a function of the subjective attitudes and beliefs about him contained in the minds of other people . But since these are beliefs in the minds of others, Jones can in no way legitimately own or control them. Jones can have no property right in the beliefs and minds of other people.

要約:人は評判に「財産権」をもつゆえ名誉毀損や誹謗中傷(とりわけ虚偽のもの)は違法であるべきだとされる。 だがやはりそれは間違っている。人は皆自分自身の体を所有しており、その頭も人格もその人のものである。しかし誰もが自分の精神を所有しているということは、誰も他人の精神を所有できないということである。ある人の評判は物理的実体でないし、その人の頭の中にあるものでもない。その人の評判というのは他人の 頭の中にある主観的な態度と信念の関数である。それらを所有したりコントロールしたりすることは絶対できない。他人の信念と精神に財産権をもつことなどできないのである。


06/08/07 昨日の記事の「同氏に関するうその話を含む本の原稿を売り歩いていたという」部分に関して。これは「言論(表現)の自由」対「名誉毀損」というおなじみの問題である。

再び The Ethics of Liberty (Murray N. Rothbard) より

Smith owns his own body and therefore has the property right to own the knowledge he has inside his head, including his knowledge about Jones. And therefore he has the corollary right to print and disseminate that knowledge. ...

... We have so far been assuming that Smith’s knowledge is correct . Suppose, however, that the knowledge is false and Smith knows that it is false (the “worst” case). Does Smith have the right to disseminate false information about Jones? In short, should “libel” and “slander” be illegal in the free society?

And yet, once again, how can they be? Smith has a property right to the ideas or opinions in his own head; he also has a property right to print anything he wants and disseminate it. He has a property right to say that Jones is a “thief” even if he knows it to be false, and to print and sell that statement. ...

要約:スミス氏(脅迫者)の体は彼のものだ。それゆえ彼は頭の中にある知識にも財産権をもつ。したがって彼は当然それを公表する権利がある。以上は知識が「真」である場合の話だが、知識が「偽」である場合はどうか。スミス氏は嘘の情報を流す権利はあるか?つまり名誉毀損や誹謗中傷は自由社会において違法であるべきか? やはりそうではない。スミス氏はたとえそれが嘘であると知っていても ジョーンズ氏が泥棒だと言う権利があるし、それを本にして売る権利がある。

※ロスバードは名誉毀損や誹謗中傷を不道徳だと認めながらも合法化すべきだと言っている。また嘘の話が違法でない社会では皆人の話に注意深くなるから、証明不足の名誉毀損話はそう簡単には信じてもらえないだろうとも言っている。


06/08/06 下の記事には「プライバシーを侵害された上、恐喝されたとして」訴訟が起きたと書いてある。最後の一行も興味深い。

B・ウィリス氏、幼なじみを提訴=「恐喝された」と主張

映画「ダイ・ハード」などで知られる俳優ブルース・ウィリス氏はこのほど、自分の個人的な写真などを整理するために雇用していた幼なじみの男性にプライバシーを侵害された上、恐喝されたとして、100万ドル(約1億1500万円)以上の損害賠償と写真などの返却を求める訴訟をロサンゼルスで起こした。

訴訟を受理した裁判所の文書によると、ウィリス氏は、この男性が10万ドル(約1150万円)以上と自動車などを要求し、応じなければ、ウィリス氏の個人的な写真を公表すると脅したと主張。このほか、同氏に関するうその話を含む本の原稿を売り歩いていたという。(時事通信8月4日)

The Ethics of Liberty (Murray N. Rothbard) より

The right to blackmail is deducible from the general property right in one’s person and knowledge and the right to disseminate or not disseminate that knowledge. How can the right to blackmail be denied?

Furthermore, as Professor Walter Block has trenchantly pointed out, on utilitarian grounds the consequence of outlawing blackmail--e.g., of preventing Smith from offering to sell his silence to Jones--will be to encourage Smith to disseminate his information, since he is coercively blocked from selling his silence. The result will be an increased dissemination of derogatory information, so that Jones will be worse off from the outlawry of blackmail than he would have been if blackmail had been permitted.

要約:恐喝する権利は自然権から演繹される。帰結主義/功利主義的にはどうか。もし恐喝を違法にするとどうなるか。 これは「沈黙」の売買を禁止することである。恐喝される側の人間(潜在的な買い手)は不名誉情報を公にされることでさらに状況が悪化する。

※このニュースについて詳しくはこちら。 なおこの訴訟はすぐに取り下げられた模様。


06/07/24 Free-Market Alternatives to the State(libertariannation.org)。 ネットで読めるアナルコ・キャピタリズムの論文への網羅的リンク集。 テーマごとに分類されているのがとても便利。しかも少しずつ論文の説明や引用がついている。


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