アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

法と経済学入門2(翻訳)


以下は D.Friedman 教授の「法と経済学」講義(2000年秋)で行われた中間試験を翻訳したものです。 問題や解答の意味については1997年春の講義ノートや対応するLaw's Order の章が参考になります。

Economic Analysis of Law (Fall 2000)
Santa Clara University School of Law
Professor David Friedman
Midterm

法の経済分析(2000年度秋学期)
サンタクララ大学ロースクール
デイビッド・フリードマン教授
中間試験

(設問1は効率性の意味について。1997年度春学期中間試験・設問1と同じため省略。)

【設問2】 外部性

A. Why does the existence of external costs lead to inefficient outcomes? What about external benefits?

外部費用が非効率な結果をもたらすのはなぜか。また外部利益が非効率な結果をもたらすのはなぜか。

B. Briefly describe the Pigouvian solution to the problem and the difficulties in implementing it.

ある問題のピグー的解決とは何か。またピグー的解決にともなう困難とは何か。簡潔に説明せよ。

C. Briefly describe Coase’s critique of the Pigouvian solution.

(コースのピグー批判について。1997年度春学期中間試験・設問2と同じため省略。)


【模範解答】

A. Individuals make decisions based on total costs and benefits to themselves. If my decision also imposes costs on someone else, I may do it because net benefits are positive to me even though net benefits are negative taking into account the external cost. I have then produced an inefficient outcome.

Similarly, if there is a positive externality, I may not take the action (because costs to me are larger than benefits) even though taking it would produce net benefits (including the external benefit), which again results in an inefficient outcome.

個人は自分にとっての費用と利益だけを考え意思決定する。 私の決定が他人にコストを課すとしても、 私にとっての純利益がプラスなら私はそれをやる。 たとえ外部費用を入れると全員の利得の総和がマイナスになるとしてもである。 私は一つ非効率な結果を生み出した。

同様に、正の外部性があったとしても私は行動しないかもしれない (私にとってのコストが利益を上回るために)。 たとえ外部利益を入れると全員の利得の総和がプラスになるとしてもである。 私はまた一つ非効率な結果を生み出した。

B. Charge someone who produces an external cost an amount equal to the cost, thus making net cost for him equal net cost to everyone. This requires the agency imposing the Pigouvian tax both to be able to know what the external cost is and to have an incentive to accurately measure it and impose it.

外部費用を生み出す人にその外部費用と同じぶんだけ支払いを命じる。 そうして彼が考えに入れるコストを全員にとってのコストと一致させる。 だがこのときピグー税を課す当局は、 何が外部費用なのか正しいことを知っていなければならず、 同時にそれを正確に測定し税を課すインセンティブをもっていなければならない。

【設問3】 法ルールのデザイン

An airport has only one airline flying out of it; the land under the flight path belongs to ten landowners. The airline can either do nothing to reduce noise from planes landing and taking off, or spend a million dollars a year to completely eliminate the noise; for simplicity we assume that those are its only alternatives. The landowners can use their land either for housing or as farmland.

Each landowner’s property is worth $200,000/year as farmland, $400,000/year as housing without airplane noise, $320,000/year as housing with airplane noise.

ある空港を離発着する航空会社は1社だけである。 飛行経路下の土地は10人の地主に所有されている。 その航空会社は離発着時の騒音を減らすために何もしないか、 年間100万ドルを使って騒音を完全になくすか、どちらかを選択できる。 (単純化のために選択肢はその2つしかないとする。) 地主は土地を宅地か農地に利用できる。

地主は皆、農地利用で年間20万ドル、また 宅地利用(航空騒音なし)で年間40万ドル、また 宅地利用(航空騒音あり)で年間32万ドルの収入を得られる。


(問題A) What is the efficient outcome?

効率的な結果は何か。

(解答) Noise and houses.

騒音+宅地。(訳者注:農地利用より宅地利用(騒音あり)のほうが(32-20)*10=120万ドルだけ効率的。 だがこの宅地利用(騒音あり)を宅地利用(騒音なし)にするのは経済的改悪。 なぜならこのとき、航空会社が100万ドルを使って騒音をなくす一方で、 地主たちは(40-32)*10=80万ドルの追加的利益しか得られない。)


(問題B) For each of the following legal rules, what is the outcome if there is no bargaining between the parties:

i. The airline is not liable for noise.
ii. The airline is liable for noise.
iii. Any landowner can enjoin airline noise.

以下の法ルールは、もし当事者間の交渉がないとすれば、それぞれどういう結果をもたらすか。

i. 航空会社は騒音に責任がない
ii. 航空会社は騒音に責任がある
iii. 地主は誰でも航空会社に騒音をやめさせられる

(解答)

i. Noise and houses.

騒音+宅地。(訳者注:航空会社に責任がなければ、航空会社は騒音を出す。騒音があるという条件の下で、各地主の最適反応は、20万ドルの農地利用ではなく32万ドルの宅地利用。)

ii. Noise and houses--unless the court overestimates the damage by enough to make it in the airline’s interest to engage in (inefficient) noise reduction. Or unless litigation costs are large enough to produce the same result ($80,000 damages and $40,000 in lawyer’s fees for each case, say).

騒音+宅地。ただし航空会社が(非効率な)騒音対策をしたほうがいいぐらいに 法廷の損害算定が過大だったり、訴訟費用が(たとえば各訴訟について8万ドルの損害賠償と4万ドルの弁護士料など)高かったりする場合は除く。 (訳者注:航空会社に責任があるとき、航空会社は地主に(40-32)*10=80万ドルの損害賠償をするのが適正だと考えられるが、航空会社は騒音対策に100万ドルを使うよりも「騒音+損害賠償」戦略のほうがいい。)

iii. No noise and houses.

騒音なし+宅地。(訳者注:地主は騒音をやめさせられるならば誰でもそうする。そして宅地利用で40万ドルを得る。)


(問題C) For each of the rules, what is the outcome if there is bargaining? Briefly explain. In some cases you may want to discuss alternative possible outcomes.

i. 航空会社は騒音に責任がない
ii. 航空会社は騒音に責任がある
iii. 地主は誰でも航空会社に騒音をやめさせられる

上記の3ルールは、もし当事者間の交渉があるとすれば、それぞれどういう結果をもたらすか。 簡潔に説明せよ。あるケースで複数の可能な結果がある場合はそれらを論じてもよい。

(解答)

i. Noise and houses--the landowners, even if they can overcome the public good problem, aren’t willing to offer the airline enough to pay for the noise reduction.

i. 騒音+宅地。仮に公共財問題をクリアできるとしても、(この場合はそもそも)地主たちは騒音をやめてもらうために航空会社にお金を払わないだろう。 (訳者注:騒音なし+宅地=年間40万ドル、 騒音あり+宅地=年間32万ドルでその差は8万ドル。 全地主の損失合計は80万ドル。 80万ドルのために100万ドルを集めることはない。)

ii. Noise and houses. Airline and landowners may reduce litigation costs by a permanent out of court settlement. Except that …

If courts overestimate the costs and/or litigation costs are high, bargaining costs might force the no noise and houses outcome. This is made less likely by the fact that the airline can settle with some landowners and pay damages to the holdouts--as long as the total is less than the cost of preventing the noise.

ii. 騒音+宅地 *1 。また航空会社と地主はいつも法廷外で和解(示談)することで訴訟費用を節約するかもしれない。だが以下のような場合は騒音+宅地にならない。

もし(法廷に行くとして)損害算定が過大になりそうだったり、訴訟費用が高くなったりしそうなら、(事前の)交渉コスト次第では「騒音なし+宅地」を余儀なくされることもあるだろう *2 。 --ただこの可能性は、航空会社が地主の何人かと示談し、それが無理な場合は命じられた賠償金を払うという戦略をとりうるぶんだけ低くなる(もちろんこれはその総費用が騒音をなくすコストより低いときに限るが) *3 。

(訳者注1:このケースはいろんなパターンがある。だがいずれにせよ航空会社は、法廷に行く前に、また100万ドルの騒音対策をする前に、8万〜10万ドルを各地主に払う交渉・示談について考えたほうがいい。)

(訳者注2:もし法廷に行くとして、たとえば賠償金が過大な99万ドルになったり、 適正な80万ドルという算定であっても訴訟費用が19万ドルになったりしそうだとする。 このとき事前の交渉コスト(取引費用の一つ)が1万ドルを超えるなら、交渉もせず法廷にも行かず最初から騒音をなくすほうがいい。このときの結果は騒音なし+宅地。)

(訳者注3:交渉コストが高くつこうとも、部分的に示談にすることで「騒音+宅地」ですむ可能性があるということ。 たとえば賠償金が9.9*10=99万ドルになりそうなとき、 先にうまく5人と8.1万ドルで示談できるなら、支払う金額は合計49.5+40.5=90万ドルになる。 このとき仮に交渉コストが高くついて5万ドルになるとしても、 訴訟費用が5万ドル以下であれば総費用は100万ドル以下になる。結果は騒音+宅地。)

iii. Either noise and houses--if the landowners can overcome the holdout problem and accept compensation for permitting noise--or silence and houses if they can’t.

iii. 地主たちがホールドアウト問題をクリアし、騒音に対する補償を受け入れる場合は「騒音+宅地」。それができない場合は「騒音なし+宅地」。 (訳者注:本来8万ドル〜10万ドルを全地主に払うことで話はまとまるが、 各地主は拒否して80万ドル〜100万ドルの大部分の得ようとするインセンティブがある=ホールドアウト問題。)


(問題D) Suppose transactions costs are very high, giving the same outcomes as in B above. How large is the inefficiency from each rule, relative to the efficient outcome?

i. 航空会社は騒音に責任がない
ii. 航空会社は騒音に責任がある
iii. 地主は誰でも航空会社に騒音をやめさせられる

いま取引費用がとても高く、これらの法ルールは全部問題Bと同じ結果をもたらすとせよ。このとき各ルールがもし非効率な結果をもたらすとしたら、それは効率的な結果と比べてどの程度のものか。

(解答)

i. Zero--the efficient outcome.

i. 差はない。効率的な結果。

ii. Zero--except that there may be litigation costs of unknown size (but not more than $200,000 litigation cost to the airline, since otherwise it will stop making noise).

ii. 差はない。ただし未知の大きさの訴訟費用が存在するような場合は除く。 (ここで未知の大きさといっても航空会社の予想は20万ドル以下のはずである。それを超えるときは騒音を止めるだろうから 。) (訳者注:損害賠償金=80万ドル。騒音をなくすコスト=100万ドル。 もし訴訟費用が20万ドルを超えるなら総費用が100万ドルを超えるので騒音をなくしたほうがいい。)

iii. The airline pays $1,000,000 to buy noise reduction that produces a benefit of only $800,000, for a net cost of $200,000.

iii. マイナス20万ドル。航空会社は 地主たちの80万ドルの利益のために100万ドルを使って騒音をなくしている。

【設問4】 所有権ルールと責任ルール、ex ante(事前)とex post(事後)

Answer one of the following two questions:

いずれか一方の問いに答えよ。

A. Explain the difference between a property rule and a liability rule, and what determines which is appropriate to some particular legal issue.

(所有権ルールと責任ルールの違いについて。1997年度春学期中間試験・設問3と同じため省略。)

B. Explain the difference between ex ante and ex post enforcement, and briefly describe the advantages of each.

法執行におけるex ante(事前)とex post(事後)の違いについて説明せよ。 またそれぞれの利点を簡潔に述べよ。


【模範解答】

B. ex ante tries to prevent an undesirable outcome, such as a car crash, by penalizing behavior that is believed to lead to that outcome--a speed limit enforced by speeding tickets, for example. ex post tries to prevent the undesirable outcome by penalizing the outcome, thus giving the party an incentive to prevent it.

ex ante(事前)は望ましくない結果を、 そのような結果につながると考えられる行為を罰することによって、 防止しようとする。 たとえば車の衝突を防止するための、スピード違反切符による速度制限などである。 ex post(事後)は望ましくない結果を、 結果を罰することによって、防止しようとする。 そして当事者にそのような結果を防止するインセンティブを与える。

The advantage of ex ante is that it can be applied with a higher probability of a lower punishment, thus reducing problems of risk aversion and the need to resort to inefficient punishments such as imprisonment. The advantage of ex post is that it makes it in the party’s interest to apply his private information about what he is doing and what he should be doing to prevent the outcome, while under ex ante it is only the information available to the enforcement system (how fast you are driving but not how much attention you are paying to doing it) that is being used. ex ante also permits the enforcement system to impose its estimate of the relation between behavior and consequences, while ex post is using the party’s estimate; under some circumstances the former may be superior, under some the latter.

ex ante(事前)の利点は、高い確率で軽い刑罰を与えることによって、 リスク回避性の問題を軽減し、同時に非効率な刑罰(たとえば懲役刑など)の必要性を減らすことである *1 。 ex post(事後)の利点は、私的情報を生かすことが当事者の利益になるということである。 ex ante(事前)では、悪い結果を防ぐために、(運転への注意の程度ではなく運転速度という)執行システムが入手できる情報しか生かせないのに対し、 ex post(事後)では、当事者がしていること、またしているべきことという私的な情報を、悪い結果を防ぐために生かすことができる *2 。 またex ante(事前)では執行システムが行為と結果の関係を見積もってそれを強制するが、ex post(事後)では 悪い結果を防ぐために当事者の見積もりが使われる *3 。 これはある状況では前者のほうが優れているかもしれないが、 ある状況では後者のほうが優れている。

(訳者注1:たとえば車の事故を防ぐための法を事後的なものに一元化するとする。 速度制限はなく、すべて事故後のとても重い罰金である。 とても重くしなければならないのは、事故がとても低確率で起こる事象だからである。 人はとても重い罰金を払えないことが多いので、これは多くの場合懲役刑(刑務所での強制労働)をともなってくる。 しかしこの事後的な法には二重の高いコストがかかる。

まず人はとても重い罰金を恐れて、非効率なほどに車の運転をしなくなるだろう(コスト1)。 そして懲役刑が純コストということである。 受刑者が自由を奪われる一方、他の人は刑務所の運営費を出さなくてはならない(コスト2)。

そこで速度違反切符は保険のような役割をする。 大部分の人は、万が一の重刑(事故・病気・災害)より切符(保険料)を好む。 保険は便利なものであり、人のリスク回避性から出てくる不便を減らす。 そしてこの切符のおかげでわれわれは多くの人を刑務所に入れなくてすむ。)

(訳者注2:事前的な法=速度制限では、運転への注意という私的な情報が外部からつかめないために、ぼんやり考え事などをしながら運転する悪いインセンティブがある。 事後的な法=実際に事故を起こしたときの刑罰はこのインセンティブを抑止する。 このことは言い換えれば、ドライバーの私的情報を悪い結果を防ぐために使うということである。)

(訳者注3:事前的な法=速度制限では、法システムが勝手にスピードと事故の関係を決めているわけである。事後的な法=実際に事故を起こしたときの刑罰はそうではない。 能力のあるドライバーは事故を起こさないようにスピードを出すことができるので こっちのほうがいい。飲酒運転なども同様である。どちらがいいかは時と場合による。)

(設問5は省略。)

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